奥健一郎研究室 学生へのメッセージ


(平成21年3月記す)


自分なりの哲学観を



経営哲学と組織行動を様々な観点から研究しています。元々は、経済学の研究からスタートしました。
これは、より厳密には、応用経済学の分野になりますが、私の関心は、そこから、個々の組織や企業のありように向かっていくこととなりました。
経営哲学というのは、経営学の分野でも、どちらかというと、まだ発展途上にある学問といっていいと思います。最近私は、各々の経営者の思想ないしは哲学が会計というものにどのように反映されるか、という点について、特に関心を持って、米国の大学と研究を進めています。
また、皆さんのほとんどが将来属するであろう、企業というものに関心のある人は多くおられると思いますが、そこでも、やがて係長や課長、あるいはプロジェクトのリーダーといった役割を担う人々は、数多く出てくるだろうと思います。そこにおける人々をしっかりとリードし、成果を挙げていくことも、立派なマネジメントであり、経営なのです。こういったことは、皆さんの将来においても、非常に大事なことであろうと思います。
さらに、経営の哲学というものを探求していくと、それは、過去の先達が残した様々な思想とも非常に関連が深いことがわかります。特に、わが国の経営者の物の見方、考え方というものは、その多くが東洋の思想と関連が深いことがわかります。また、あるべき経営者の考え方を探求していく上でも、様々な思想を研究するということは、必要不可欠なことなのです。この辺について、もう少し述べてみたいと思います。
そもそも、私がこういった考え方に興味を持ったきっかけは、大蔵省(現・財務省)時代に、中村天風という方の本に出会ったことがきっかけでした。その後、松下幸之助さんという経営者を研究する機会に恵まれ、さらにそこから、東西の経営者、思想家の本をむさぼるように読みました。
この時、人生を生き抜く上で、自分なりの確固たる哲学観を確立することが、いかに大切なことであるかを知りました。
特に若い皆さんにとっては、先人の教えを自ら学ぶ姿勢を持っていただきたいと思います。ここ鹿児島も、特に幕末においては、西郷隆盛や大久保利通を始め、数多くのリーダーを輩出しました。今年度新たに新設した科目『先人に学ぶリーダーシップ』等をきっかけとして、彼らの生き様に触れ、かつそれを通じて自分の人生についても今一度真剣に考えてみることは、必ずや皆さんの将来に希望を与えてくれるものとなるでしょう。




真のエリートを目指すということ



今日、政治の腐敗や企業の不祥事、陰惨な社会事件を目にしない日はない、といっても過言ではないくらい、世の中の乱れは顕著になってきておりますが、様々な法律や政策を施しても、それだけで社会の問題が解決するわけではありません。最後は、皆さん一人一人の心の有り様や志というものにかかってくるのです。
たとえば、皆さんは、『エリート』という言葉をきいて、どういう人を連想するでしょうか?
まずこれだけ時代の流れが速いと、自分なりに時代の先を読む、ということが不可欠になってきます。それができるためにはまず、しっかりと勉強することが必要なのはいうまでもありません。
しかし、それだけではないのです。かつ実際に行動して、小さなことでいいから、時代に風穴をあける、ということなのです。そしてこれができるためには、行動する時、いい意味で『バカになりきる』ことが必要です。幕末の坂本竜馬など、その典型例かもしれません。これらの一見矛盾しているかのような要素が自然に備わっている人こそ、時代の求める真のエリートなのです。
では、そういう人になるためには、まず何が必要なのでしょうか?東洋思想においては、自分が何かを身につけた程度において、『知識』『見識』『胆識』の三つの段階があると言われます。第一の『知識』は、いうまでもなく、これまでも皆さんが学校で数多く学んできたものです。第二の『見識』とは、自分の知識がより深まり、自分のものの見方、考え方にまでなっていくことです。そして第三の『胆識』ですが、これは、見識がさらに深まり、血肉化すること、完全に自分の体に染み込んだレベルのことをいいます。
この胆識のレベルにまで落とし込み、学問を活かすことを、『活学』といいます。学生の皆さんには、これから大学で学ぶことを活学とし、ぜひとも自らの人生に活かしてほしいと思います。




やっていることを『好きになる』



皆さんは将来、好きな仕事に就きたいと思っているでしょう。また勉強にしても、面白そうな好きなものだけやりたいと思っている人もいるかもしれません。
たとえば仕事を例に挙げてみますと、『好きな仕事に就く』ということと、『仕事を好きになる』ということは全く違います。たとえ自分の趣味であったとしても、仕事になると、それは厳しいものとなります。これは、皆さんがやる勉強にしても、同じことがいえます。
そこで、まずは今、為さねばならないことを『好きになる』努力が大切です。どんなことでも、一生懸命に取り組んでいると、仕事にしても、学問にしても、その本当の『味』というものがわかってくるようになります。そして、本当の意味で、それが面白くなってきたと言えるようになります。そうなればしめたものです。
皆さんが最初に学ぶ共通教育にしても、ともすると、何となく味気ないように思われるかもしれません。そういうときでも、まずは積極的に取り組んでみてください。そして、好きになる努力をしてみて下さい。こういう習慣が、これからの皆さんの人生において、大変役立つことになるものと確信します。
そして、一歩一歩着実に歩んでいくという、『地味な努力』を決してバカにしないことです。
物事とは、決して一気呵成にできるようにはなっていません。正しいビジョンと地道な努力、創意工夫とが相まって、初めて可能なことなのです。小さなことでいいので、そういった形での成功体験を、学生時代にぜひ積み上げていただきたいと思います。

奥健一郎研究室