今こそ石橋湛山に学ぶべき

吉田 健一


先日、NHKの『その時、歴史が動いた』という番組で、石橋湛山元首相を取り上 げていた。石橋湛山と言えば、戦前、小日本主義を唱え、戦争に反対した人と して知られる。経済ジャーナリストとして、日本の帝国主義に反対した人とし て有名である。戦後、短期間首相になったことも勿論、知られている。が、首 相退任後の活動については、あまり知られていなかったのではないだろうか?

勿論、石橋湛山を尊敬している方々には、短期政権の後、首相退任後の活動に ついても知っておられる方は多いと思う。が、私は、この番組で初めて石橋の 偉大さを知った。首相を辞めた後、石橋が、中国との関係をより深いものにし て、アメリカ一辺倒の外交について異を唱え、冷戦下の世界情勢の中で、何と か、冷戦構造をこわし、世界平和に向けて活動した事などは私は不明にして知 らなかった。

石橋湛山は冷戦下で、日米中ソの4カ国の安全保障体制を考えていたようだ。世 界がアメリカを中心とする自由主義陣営(西側)と旧ソ連を中心とする共産主 義陣営(東側)に別れ、政治的・軍事的・経済的に冷たい戦争に入っていった 時代において、2国間の安全保障ではなく、日本を含む4カ国の安全保障体制を 考え、冷戦構造を壊そうとしたというのは、度肝を抜かれた。

今こそ、我々は、石橋湛山に学ぶべきではないだろうか?ソ連は、既になくな り、冷戦構造ははるか昔になくなった。しかし、日本は、米国とより堅く手を 結びつつ、中国をはじめとする東アジアの事も考慮に入れないと難しい状況に ある。が、国内世論は、親米、反米、親東アジア、中国脅威論とバラバラだ。 中国・韓国嫌いの人はよりアメリカに追随(というか、より親しく)しようと する。反米の人や、アジア重視の人は中国を大事にするが、そういう人は新米 保守派からは媚中派と揶揄される。この、米国か中国かという二元論が今の日 本を追い詰めている気がする。今こそ、我々は石橋湛山に習い、日米中の3国が 同時に仲良くなり、世界を安定させる方法を、米中両国に自らイニシアチブを とって主張すべきではないだろうか?

 

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吉田 健一研究室